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合併症/副作用
脳脊髄液シャントシステムが原因と考えられる合併症には、
薬剤の使用に伴うリスク、 外科治療、 異物の混入などがあり
ます。
注意 :
シャントシステムを留置した患者では、 合併症の徴
候を早期に発見するため、 術後慎重にモニタリング
を行う必要があります。
医師は患者自身またはその家族に対し、 CSFシャントシステ
ムについて教育し、 特に留置したシャントシステムによる合
併症を説明すると同時に、 代替の治療法について説明する
義務があります。
シャントの主な合併症は、 閉塞、 感染、 オーバードレナージで
す。 これらの合併症は、 速やかに医師の治療を受ける必要が
あります。
閉塞
閉塞はシャントシステムの合併症のなかで最もよく みられるも
のです。 シャン トのどの部分にも起こる可能性があります。
脳室カテーテルは血塊、 脳組織または腫瘍細胞によって閉
塞することがあります。
脳室カテーテルの端が直接、 または脳室壁の崩壊により脈
絡叢または脳室壁に埋まり、 オーバードレナージが生じる可
能性があります。
心臓カテーテルには血栓が形成され、 カテーテル周囲の血
塊が肺循環に塞栓を形成する可能性があります。
腹腔カテーテルは腹膜または腸ループにより閉塞する可能
性があります。
脳組織片や生物の付着(蛋白沈着など)によって閉塞しても、
シャントの開存性が失われる場合があります。
シャントが閉塞すると、 すぐに頭蓋内圧亢進の徴候および症
状が再発します。
このような徴候および症状は患者によっても時間によっても
異なります。
幼児および小児では、 頭蓋骨の異常拡大、 泉門膨隆、 頭皮
静脈の拡張、 嘔吐、 注意力低下を伴う病的興奮、 眼下方偏位
や、 時に痙攣などの症状がみられます。
年長の小児および成人では、 水頭症による頭蓋内圧亢進が
頭痛、 嘔吐、 霧視、 複視、 嗜眠、 運動低下、 歩行障害または精
神運動低下を引き起こし、 全身の障害につながるおそれが
あります。
閉塞が確認され、 開存性テストで閉塞を軽減することができ
ない場合には、 再手術またはデバイスの除去を考慮しなけれ
ばなりません。
感染
シャントに慢性的な故障がある場合には、 その長さに沿って
CSFの漏出や排出がみられ、 感染症のリスクが増大します。
局所または全身の感染症もCSFシャントシステムの合併症で
す。 これは通常、 シャントに皮膚細菌がコロニーを形成する
ことによります。 しかし、 異物に関しては局所または全身の感
染症がシャントにコロニーを形成することがあります。 シャン
トの長さに沿って紅斑、 浮腫および皮膚びらんがみられる場
合には、 シャントシステムの感染であることを示していると考
えられます。
長期にわたる説明のつかない発熱もシャントシステムの感
染によると考えられます。
全身状態の変化が好発条件である敗血症は、 シャントの感
染が原因であると考えられます。
感染がみられる場合には、 システムを抜去するとともに全身
投与またはく も膜下投与による治療を開始してく ださい。
オーバードレナージ
オーバードレナージは脳室虚脱(細隙脳室症候群)および硬
膜下血腫を引き起こすこ とがあります。
小児では、 泉門の陥没、 骨重積、 シルビウス中脳水道の狭窄
による頭蓋狭窄、 または交通性水頭症から閉塞性水頭症へ
の変化も起こる可能性があります。
成人では嘔吐、 聴覚または視覚障害、 嗜眠などのさまざまな
症状や、 立位でみられるが仰臥位では改善する頭痛も起こ
る可能性がある。
臨床観察や画像診断の結果に応じて、 医師はポラリスバルブ
の設定圧を変えることによりオーバードレナージの症状を軽
減し、 脳室の大きさを正常に戻すこ とができます。 しかし、 硬膜
下出血の場合は速やかにドレナージの適応となります。
その他
シャントシステムが故障すると、 各種部品が外れるおそれがあ
ります。
脳室カーテルは脳室内部で移動することがあります。 腹腔カ
テーテルは腸の蠕動波により腹腔に移動することがあり、 心
房カテーテルは血流によって右心房 ・ 右心室に移動すること
があります。
腹腔カテーテルによる腹部臓器の穿孔または閉塞が起こる
場合があります。
身体の成長によりカテーテルが挿入部位から徐々に抜け出
ることがあります。
このような異常があらわれた場合には、 シャントを直ちに元の
位置に戻す必要があります。
埋め込み部位に皮膚壊死が起こる可能性があります。
線維性の癒着をきたすと、 いずれ脳室カテーテルが脈絡叢
または脳組織に固定されます。 除去を考慮する際は、 カテー
テルの軸付近をゆっく り回転させると自由に動く ようになり
ます。 カテーテルを無理に引き抜いてはいけません。 無理に
しないと外れない場合には、 血管内出血の危険にさらされ
る可能性があるのでそのままにしておく方がよいでしょ う。
シリコンアレルギーの症例が報告されています。
脳室シャント留置後の癲癇の症例が報告されています。
細胞集塊または蛋白沈着によりバルブのルビーボールがハ
ウジングの中心から離れる可能性があります。 こうした状況
は、 特に次のような結果を招く場合があります。
-
バルブの調整機能が失われ、 オーバードレナージのリ
スクが増大します。
-
逆流防止機能が低下します。
細胞集塊や蛋白沈着によりローターの動きが妨げられる可
能性があります。 この場合、 アジャストメントマグネッ トでバ
ルブを調整することはできません。
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