高音域に対するコンプレッション量を調節するコントロールです。 右に回すほどハイエンドのダイナミックレンジが狭くな ります。
12 バンドシリーズのコンプレッサーセクションには、 2 系統の独立したスタジオクオリティの専用ダイナミクスコントローラー集積回
路が搭載されています。 この回路は、 一般的なシングルバンドのコンプレッサーを使用するときにありがち な諸問題に対応すべく、 ベ
ースに特化した設計になっています。
一般的なコンプレッサーでは、 非圧縮から圧縮に切り替わる瞬間 (つまり、 信号がスレッショルドを越えた瞬間) に、 粗く不自然なサウ
ンドになってしまうことがよくあります。 特に、 レシオが高く設定されている場合はこれが顕著です。 また、 通常のプリセッ トされたアタ
ックタイムやリリースタイムを使用する場合、 対応が遅すぎて信号レベルの急速な変化 (特にチ ョッパー奏法で生じるアタック成分)
について行けないか、 あるいは対応が速すぎて低音域が歪んでしまうかのいずれかで妥協せざるを得ないことが常です。
このような問題を解決するために、 12 バンドシリーズのコンプレッサーには、 デュアルバンドのソフトニータイプが採用 されていま
す。 このコンプレッサーでは、 高音域と低音域のそれぞれに対して異なるアタックタイムとリリースタイムがプ リセッ トされており、 さ
らに帯域ごとのコンプレッション量をお客様が操作できる独立したコントロールが搭載されていま す。
デュアルバンドコンプレッサーは、 信号を高音域と低音域に分割し、 異なるコンプレッション回路を通過させてから再統合 するという
仕組みなっています。
帯域ごとのコンプレッション量は、 LOW BAND と HIGH BAND の各コントロールで調節できます。 この効果は、 不要なピーク成分やブ
リージングノイズを除去する目的で、 トラック全体のマスタリングに使わ れる最新鋭のコンプレッサーと似ています。
ソフトニーとは、 スレッショルドの値を超えた信号に対して、 入力レベルが上がるほど圧縮される比率が徐々に高くなって いく タイプ
のコンプレッション効果です。 一般的なハードニータイプよりも、 コンプレッション効果が滑らかになります。
12 バンドシリーズのコンプレッサーは、 帯域ごとに異なるアタックタイムとリリースタイムがプリセッ トされています。 低音域では歪み
を防止をするように低速で、 高音域ではアタック時のピーク成分にも反応できるように高速で動作します。
帯域ごとに 1 つずつ搭載されたコントロールを使って、 スレッショルド、 レシオ、 補正ゲインを同時に調節できるため、 目的 のコンプレ
ッション量を簡単に得ることができます。 内蔵のコンプレッサー回路には、 当社のエンジニアが面倒な設定の大部分を済ませたもの
が回路に組み込まれているため、 スタジオのコンプレッサーを白紙の状態から設定するときに比べ れば、 非常に操作は簡単です。
この回路はあらかじめ適切な値にチューンナップされているため、 コンプレッサーのオン/オフを切り替えても信号のレ ベル差はあ
まりありません。 ただし、 これは INPUT GAIN コントロールが正しく設定されているかどうかに応じて異なり ます。 コンプレッサーをオ
ンに切り替えたときにレベルが高過ぎると感じられる場合には、 INPUT GAIN コントロールを少し上げてください。 逆にレベルが低過
ぎると感じられる場合は、 INPUT GAIN コントロールを少し下げてください。
デュアルコンプレッサーにはいくつかの用途が考えられます。 例えば単体でダイナミックレンジを制御する目的で使用す れば、 フィン
ガースタイル、 チョッパー(スラップ)、 ピックといったベースの奏法をスムーズに切り替えることができます。 コンプレッサー回路は設
定通りに信号を圧縮しますが、 ボトムエンドを歪ませることはありません。 あるいはベースギターでよく見られるように、 アタック時の
ピーク成分により信号全体のレベルが左右されたり、 ポンピングが発生すること もありません。
低音域のみにコンプレッション効果をかければ、 アタック感は損なわずに、 ボトムエンドを重厚なサウンドにすることができます。 フル
レンジでコンプレッション効果をかける場合に比べてサウンドの変化が少ないので、 低音域のバランスが制御しやすく、 パワーアンプ
やスピーカーに負担をかけずに音量を上げることが可能です。 また、 アタック時のダイナミクスを失うことなく、 音の粒立ちをはっきり
とさせる効果も得られます。 高音域にコンプレッション効果をかけると、 音のアタック部分に直接影響しますので、 使用には注意が必
要です。 しかし、 極端に高い設定でも、 チョッパー(スラップ)演奏やフレッ トベースでは面白い効果が得られます。 また、 ミックス内で倍
音 を目立たせる効果もあります。
バルブドライブ回路を高めの設定にして使うときは、 ハイバンドのコンプレッサーでオーバードライブのかかり方を制御することで、
効果の極端なサウンドを作り出すことも可能です。
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